自炊書籍の閲覧ソフトウェア環境として理想を述べる

今回は、僕の考えた最強の電子書籍閲覧環境について系の話である。

自分を含めて、周りではiOSやAndroidを用いて、自炊した書籍を閲覧したいという要望が強い。

たとえば自分の例では、iOSの電子書籍ストア・アプリの1つにて、コツコツと買い続けてきたものが、突然サポート終了になり、書籍データのダウンロードはできるが、アプリのダウンロードはできなくなってしまった、という体験をした。DRMのかけられたデータ・もしくは電子書籍サーバから配信されるデータは自身でコントロールできない。もう二度と電子書籍なるものを買うか、と心に決めた(が、その後も少しは電子書籍を買ってしまっている…)。

また自炊した資料を、自由に閲覧したい、という要望もある。よって、自炊した書籍を閲覧したいという要望が強い。

自炊した書籍を閲覧するにはiOS,Androidアプリを用いるのだが、いくつか問題がある。例えば、対応する画像形式に割と厳しい制限があったり、書籍データの配信や既読情報管理が面倒だ、という点だ。ちなみにこの既読情報管理という話は、異なるデバイス・タブレット上で、「どのデータを閲覧したか」「いつ閲覧したか」「その評価はどうだったか」などのメタ情報を保存したい要求のことだ。これは自分自身が欲している。

もちろん、これら複数の問題は手間をかければ面倒だが解決が可能であるが、どうにかしたい。

そこで風呂に入りながら、ボーっと理想の形態とはどのようなものか考えていた(本当は別のやらなければならないことについて考えなければならないのだが逃避した)。

理想の自炊書籍の閲覧環境

1つの解決方法は、自分で自作の自炊電子書籍管理アプリを作ることだ。全ての画像形式に対応し、既読管理・書籍データの配信は、Dropboxや自作のサーバソフトウェアなどを使うことになるだろう。ただ、この時点でiOS、Android、WP8向けにアプリを作るなど地獄だ。3タイプの開発環境を保持するなど、正気ではない。いや、自分だけで使うアプリの話だから、いいのだけれども、どうせなら、すべてのデバイスで使いたい。

話を戻して、例えば、各ベンダー向けのアプリを作るとして、配信や既読管理に自作のサーバソフトウェアを必要とするのであれば、初めからHTML5を使ったブラウザ上で閲覧できるシステムを作った方が良いのではないか、とも考えられる。HTML5を使ったシステムであれば、iOSでもAndroidでもPC上でも閲覧が可能である。商用のシステムでも、HTML5を用いて十分に実用になっているものもある。HTML5上で閲覧すると同時にメタ情報を保存する。形式の異なる画像でも、サーバ上ならライブラリを用いて容易に変換できる。配信の問題はなく、どうやってサーバ上にアップロードするのか、という課題が残るだけだが、これも簡単に解決できるだろう。操作性も問題ないだろう。

欠点は、オフライン状態での書籍の閲覧が困難だろう点(ブラウザ上のストレージには、それほど大きいデータは収納できないはず)である。

これらの検討を進めていった結果、subsonic方式が良い、と思った。

subsonic方式の自炊書籍の閲覧環境

subsonicとは、Javaで動作する音楽向けのメディアサーバソフトウェアであり、オープンソースである。Windows,Mac,Linuxに自分で入れて使う。subsonicはWebインターフェースを持ち、Web上からでも自分がアップロードした音楽を再生できる仕組みになっている。また音楽ファイルのメタ情報を解析して、曲名やジャケット画像などの表示、そこからのプレイリスト作成も可能である。

subsonicの機能の中でも最も有用だと思えるのが、APIである。このAPIを用いてiOSアプリやAndroidアプリから、音楽を読み込んで再生できる。アプリで読み込むことで音楽をキャッシュすることができ、オフライン状態でもある程度使うことができる。プレイリストはローカル側でもサーバ側でも管理することができる。音楽ファイル形式が異なる場合は、mp3に変換して配信してくれる。

ここまで考えたところで、ああ、subsonic的な自炊書籍メディアサーバが自分の理想だったのだ、ということが分かった。自分の音楽を聞く環境はiTunesからsubsonicにすべて移行してしまった。iTunesでメタ情報の管理自体は今でも行っているのだが、聞く環境についてはsubsonicに任せている。どの端末からでも、PCからでもiOSからでも自分の音楽を聴くことが出来る利便性は大きい。

subsonic的な特徴を備えた自炊書籍メディアサーバを想像する

SUBSONIC的な自炊書籍メディアサーバ

上図はsubsonic的なメディアサーバがどのような関係を持つのかを示した図である。まず、Webインターフェースを持ち、PCブラウザからは簡単に閲覧できる。APIを持ち、スマートフォン・タブレットアプリはAPIを通じて書籍データにアクセスする。場合によっては、オフラインのためのキャッシュをアプリは行う。画像形式がクライアントアプリに対応していないものである場合・もしくはクライアント端末の解像度に対して大きすぎる場合は、変換を行ってから配信する。既読管理などのメタ情報はサーバと共有され、オフライン時にはクライアントアプリに保持され、再接続した際に同期される。

subsonicはそうなっていないが…基本的に多くの機能は外部アプリ向けAPIを通じて操作するように設計されるべきであり、WebインターフェースにてJavascriptやFlashでクライアントを作成する場合は、そのAPIを用いて閲覧や既読管理できる方が望ましいと考える。例えば、クライアントアプリによる書籍閲覧では端末の解像度や受け入れることのできるファイル形式をのせてリクエストAPIを叩き、Webインターフェースによる書籍閲覧ではブラウザのサイズと対応ファイル形式をのせてJavascriptからAPIリクエストを行う、という形になる。この前者と後者のAPIは共通のものであり、片方のインターフェースが出来ることは、もう片方のインターフェースでも可能になる。そうすることで、漏れのない良いシステムが出来ると思う。

subsonic的な特徴を備えた自炊書籍メディアサーバの特徴のまとめ

  • 自炊書籍メディアサーバ
    • オープンソースである
    • サーバ上で動作するメディアサーバ用のソフトウェアである
    • Webインターフェースを持ち、HTML5もしくはFlash技術を用いてPCブラウザ上で閲覧できる
      • HTML5を使用する場合は、タブレットやスマートフォンなどのデバイス上でもWeb閲覧できる
      • HTML5もしくはFlashを用いる場合、後述のAPIを通した作り方が、システムとしてシンプルである
        • Javascriptを用いてAPIにアクセスしてJSON形式の応答を解釈する、という流れ
    • APIを持つ
      • APIを用いて認証・書籍データの配信・メタ情報(既読・評価・メモ)管理できる
      • APIは仕様が公開され、iOSやAndroid、WP8等のアプリから利用できる
    • 画像形式がjpg,pngでなければ、それらの形式に再変換して配信を行う
      • 回線品質(Wi-Fi,3G)に応じて圧縮品質を変える
    • あったらいいな機能
      • Web上の好きな記事のPDFを作成して、保存しておける機能
      • デバイス紛失に対応するために、デバイスごとに有効・無効が設定できる

こうした公開API仕様が世に広く広まり、DRMなし電子書籍を購入したら自分のサーバに簡単に入れることが出来る、だとか、自分が書いた本をメディアサーバに入れて、ほかの人に公開する、だとか、自分の既読・評価・メモリストをほかの人と共有するだとか、色々なことができるようになる、予感がある。共有された情報はAPIを通じて、電子書籍アプリに配信され、本を読みながら、ほかの人のコメントが読める。

APIの作り方次第でいろいろな世界が見える。

少し別な話だが、

音楽向けのストレージサービスをしようとするのなら、サービス運営者は音楽の著作権者にお金を支払わなければならない、という判決(MYUTA事件)が過去に出た。

音楽向けのストレージサービスへのアップロードや、音楽データの配信のための複製行為の主体がサービス側にある、と判断されたからだ。よって私的な複製が成立せず、複製に対して主体であるサービス運営側はお金を支払い必要が出た、というわけだ。

それはそれで問題で、当時は憤慨した。しかし、これを回避する方法がある。それが今回のsubsonicのような利用者自身が複製の主体になるようなメディアサーバを用いることである。

「subsonicや今回の自炊メディアサーバのように自分自身が複製の主体となるシステムを構築すべきである」という、世の流れになることは悪いとは感じない。すなわち、日本においては著作権者の許可を得ずに複製するのであれば、他者に複製の主体を与えずに、利用者自身で複製のコントロールしなさい、と。そういう流れになっている。最近は、これはこれで面白い、と思っている。

subsonicのようなサービスを、簡単にサーバに入れることが出来て、自分でコントロールできる世界の方が面白い。スマートフォンのアプリのように、サーバアプリが入れ替えできるような世界。あの判決を逆手に取れる開発者なら期待できる。subsonicはWindowsにもインストール可能だが、PCに入れるのは現実的ではなく、外部のサーバを安く借りて使いたい。VPSなど安価サービスの登場のおかげでサーバの保持のための必要なお金は下がってきているので、そういった安価サーバサービス向けの簡単プラッガブルなサーバアプリができることにも、また、期待している。

こういうの書いていると作りたくなってくるな…

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どういった作り方がよいのか (2)

前回、好きなものを作れば誰も見向きもしない、要望を聞いて作ってもコレジャナイと言われる、という事柄について述べた。

ものづくりの起点において、如何なる手法を取るべきかの答えについて、どういった方法がよいのか。

これには、何通りもの答えがある。それで良いと思う。ものづくりのさらなる起点――「売れる」ものづくりを始める前にものづくりをしたくなった理由――という当初の気持ちが人それぞれだからだ。

ともあれ、「どういった作り方がよいのか」という悩みを持つ多くの人は、「良い物をつくり、人々に提供したい」「良い物を作ったが、人に使われない」などの悩みに集約されていくのだと思う。「売れるものづくり」よりも「作りたいものを作る」ことをしてきたということだ。

そうした「売れないものづくり」を続けていくことで、今まで積み重ねたものが無駄なもの、虚構なのではないのか、と、やがて打ちひしがれる。しかし、続けてきたことは無駄ではない。が、流石に続くと、そう思ってしまう。そうした状況に陥る人々は多く存在するのだと思う。そうした状況を打ち破ってきた前例を見ていくことで、変えることが出来るかもしれない。

大衆化

その現状を打破する1つの方法は大衆化、すなわち「大衆迎合」であると信じる。その道のコアな顧客が大反対するアレである。

この大衆化が大きく成功するのは、「技術はあるが、売れない」ケースであると思う。

初回の「好きだからものづくり」が終わり、こだわりの製品・サービスができた後において、次に「売れるものづくり」のイテレーション(反復作業のうちの1回の期間)に入る。この「売れるものづくり」の起点として、市場調査ではない、大衆化を今回はテーマとする。

大衆化の例はいくつかあるが、チョコエッグとニンテンドーDSを挙げる。

チョコエッグに見る大衆化のテーマ

チョコエッグの件は、最近放送されたカンブリア宮殿という番組で知った。詳しくはカンブリア宮殿のサイトにいくと、長いビデオがあるはずなので、それだけ見ても話は分かる。

海洋堂は版権ガレージキットの製造でトップクラスの技術力を持ち、有名な会社だったが、版権を大手に奪われてしまうことが何度も発生し、版権に頼らないビジネスを模索していた。その時にチョコエッグと出会い、成功につながる。

Wikipedia 海洋堂 ノンキャラクターの模索~チョコエッグの時代

宮脇修一はチョコエッグのおまけは今のところたいしたものではなく、これを海洋堂が作る事でもっと良い物ができると思いついたのである。アクションフィギュアでノウハウを蓄積した中国の工場も使える。

結果は大成功した。他社の人気キャラクターのおまけつき商品を押さえ、圧倒的な売り上げを記録した。本来の狙いである子供はもとより、おまけの完成度の高さに感心した大人までがこぞって買い始めた。加えて第二弾途中からツチノコがシークレット(=ラインナップ表に載っていないもの)で入っているということが口コミで広がり、チョコエッグファンの収集欲を刺激し、人気に拍車がかかり、2001年には大流行商品となった。

中国製造を可能にし、質の高い製造ラインを作成していたことが成功へのつながる。

脱・ガレージキット

しかし、中国で生産すれば、日本国内で金型を起こし生産するのとは比べ物にならない低費用で出来ることが判明する。そしてこれがゴーサインになった。海洋堂は「こんなウチの水準をわざわざ下げたものを真面目に作るのは気が引ける、あくまでもシャレでやるんだ」というスタンスで動き始めた。

当初はシャレで始めた中国製造が結果的には食玩ブームを起こした。現在では旭山動物公園でもガチャ(カプセルトイ)の製造を行なっている。カプセルミュージアムプロジェクト参照

フィギュアの大衆化

この例はフィギュアの大衆化である。

当時フィギュアと言えば、いわゆる美少女フィギュアであった。食玩ブームを巻き起こしたチョコエッグのフィギュアは「日本の動物」であり、第一弾はニホンザルだった。当時、「動物のフィギュアを作りたい」と言っても誰も作らせてくれない時代だった。しかし、食玩として製造することに成功する。

この流れを大衆化の良い例だと思っている。当初はシャレで作ったラインが、一般人へ提供する入り口になる。

売れた理由としては、食玩、おまけだったら”おかしに無料でおもちゃがついてくる”という感覚がある、また食玩は何が入っているのか分からず、目当てのものが出てくるまで買ってしまう、という点が番組内では挙げられていた。

チョコエッグの件をまとめるとこのような感じになる。

  • 質の良いフィギュアを製造できる(デザイン)
  • 質の良いフィギュアを大量生産できるラインを持っている(技術・ノウハウ)
  • 食玩として提供する
    • 一般客でも手に取りやすいお菓子とテーマ(動物)
    • お菓子の「おまけ」という位置(買いやすさ)
      • ただの動物フィギュアだったら悩んでしまう
    • お菓子の流通力
    • 何が出るかわからないガチャの要素(顧客あたり売上の向上)

この成功のために、色々と納得出来ないことはあったのだろうと思う。しかし、まず大衆化に成功したことが大きいのではないか。

この大衆化がもたらしたものは、今までフィギュアに興味のなかった人に売ることができたということである。大衆に「動物のフィギュアが欲しいですか?」と聞いても欲しいという人はいない。その状況化で勝ち得た製品の勝利である。

すなわち、大衆化として重要なテーマは、今まで○○に興味のなかった人にいかに売ることができるかであり、そのためには色々と切り捨てなければならないもの、技術者・開発者・ものづくりする人としてのプライドがある、ということである。

今は車が売れない時代とされている。仮に大衆化に当てはめれば「今まで自動車に興味のなかった人にいかに売ることができるか」というテーマになるが、実はこれが今の自動車業界のテーマであったりする。

ゲーム業界でも過去にどうようなことが成功しているので紹介したい。

ニンテンドーDSに見る大衆化のテーマ

過去の自分のブログ記事を参照として挙げる。ケータイ小説とNDSから文学の再発見を紐解く

ハイスペック化、操作性が複雑化していく中で、任天堂の出すゲーム機は操作性が簡単(直感的)で今までにない新しいものを作ることが課題だった。その結果、山内氏が「2画面や・・・」と言い残したのをヒントにニンテンドーDSが開発された。

操作性が複雑化していくことで、コアゲーマー以外のユーザー、つまり新しいユーザーや女性層が購入しにくい、という印象が付きまとうようになる。結果的に購入者である「お母さん」に嫌われてしまうゲーム機になってしまい、購入を抑制されてしまう。それを解決するために、誰でも簡単に利用できるという操作性が課題となった。

ゲーム業界はそれまでスペックしか求めて来なかったが、操作性を簡単にすることで誰でも出来るように見せ、成功させた。

この大衆化がもたらしたものは、今までゲームに興味のなかった人に売ることができたということである。

この中に出てくる「女性層」というキーワードが気になる。例えば一般的に「女性層」向けの製品を作るとはどういうことか考えると、色だったりその他デザインだったり、を考えがちだ。そうではない、と考える。「女性層」に支持されることの意味は、本来的には男性にしか興味を持たれないほど複雑であった製品を簡単にした、ということだ。それほどまでに簡単になると、男性のライトユーザーも興味を持つはず、すなわち、購買層全体の範囲を広くする。

ライトユーザー仮設

ライトユーザー仮説の記事にて図案化したが、コアなユーザーしか存在しない市場の規模は縮小する。触れる機会が少ないからだ。しかし、このような顧客に価値を提供できれば、大きく躍進できることだろう。

なお、ケータイ小説とNDSから文学の再発見を紐解くでは小説の大衆化、「今まで小説に興味のなかった人に売ることができた」例も挙げている。

1つの解決方法である大衆化

入り口は分かりにくいの頃から、ジブリやニンテンドーDS、スマートフォン、初音ミクなどの例を挙げ、成功とは何なのか、その要素とは何かを追ってきたが、その1つの終着点は「大衆化」になりそうだ。

大衆化とは「今まで○○に興味のなかった人にいかに売ることができるか」である。そのためには「品質に少しは妥協して価格を抑え」「しかしながら品質は他よりは高く」「複雑なものを単純化して」「広く行き渡るように工夫をして」という一連の作業できる。この作業に、技術者・開発者、ものづくりに携わるものとして「今まで品質至上主義でやってきたから客がついてきたのに何なんだ」と憤慨することは間違いない。

しかし大衆化した、その先に、コアな顧客が生まれてくる。品質至上な顧客がやってくる。そのための布石づくりなのだ、ということを誤解してはならない。

大衆化に関してポイントを書いてみる。

  • 大衆化のポイント
    • 今現在、高い技術を持っている
      • 元々、良いものでなければ大成功はしない
      • 好きな製品・サービスでなければ練度が足りない
    • 高い技術の廉価版を広く売る
      • ときには幼稚だと思うかもしれない
      • シャレでもいいから
      • 高い技術がなければ品質を保った廉価版を作れないことは多々ある
    • 流通を工夫する
      • おまけでも構わない、メインの商品でなくても構わない、というスタンス
        • 今までの別の流通を通ることが大事・顧客との出会いが増える
      • 別のものにしか興味のなかった顧客にセットにする
        • (チョコエッグの例では)お菓子にしか興味のなかった顧客にフィギュアを買わせる
    • 興味を持つデザイン要素をつける
      • カラーバリエーション
      • 形状
      • 質感
    • 複雑であれば簡単化する
      • 複雑の上に成り立つ高い技術は一般には受け入れられない
      • その製品・サービスが本当に提供したいものに注力する

海外で人気の日本の伝統工芸、カラフルな南部鉄器の記事パリっ子が南部鉄器に夢中 岩鋳(盛岡市・南部鉄器の製造・販売)欧米で人気 見直される和の道具もどうぞ。

次回には「継続的改善・Getting Real・リーンスタートアップ」について紹介したいが、これらの事象についてはまだ考えている最中なのですぐには書けない。

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どういった作り方がよいのか (1)

技術者、開発者、ものづくりの人の視点として、顧客に受け入れられる「ものづくり」とその手順、作り方について書く。

ものづくりには何通りものやり方がある。自身がこだわりがあって、作りたいと思うものを作ること。市場調査・分析の結果、世の中に足りないものが分かり、それを作ること。身の回りで自分(や隣人)が不便だと思っていて、それを解決するために作ること。

この作り方が問われることが良くある。例えば、家電製品などで、どうしてそれが必要なのか、という機能が搭載され、また、宣伝されていたりする。このときに、市場調査がよく行われていないのではないか、との疑念が生まれるからだ。

今まではスペックシートで丸がつく機能が多ければ多いほど、良い製品とされ、そのような製品が売れてきた。先の明るい、景気の良かった時代はそれでよかったが、今は先の見えない、倹約をしなければならない時代となった。人は必要最低限の機能を求め、必要であれば追加購入する。

この例として、雑貨の世界では、多少高価な雑貨店と100円ショップという業態が存在する。人は100円ショップで生活に必要な最低限のものを買い、遠出して多少高価な雑貨店に入った時に、オンリーワンな高価な雑貨を買い、100円ショップの製品をアップグレードしていく。

始めは最低限のものを、こだわりが出たら、高価なものを、という流れになっている。初めから高価なものを買う、という選択肢が狭められているような感覚がある。人は自分が要する機能性にシビアになってきている。よって、市場調査の重要性が高まっている、とかんがえられる。

この流れの上で、経済番組やものづくり関連サイトで数年前から気になることがある。「ニーズ調査は行わない」という発言をする実務家が多い。これはどういうことなのか。

Wikipedia マーケティング マーケティングと「売れる仕組み」

商品・サービスが「売れる」ためには、顧客のニーズを知り、ニーズを満たす商品をつくり、顧客がその商品の存在を知り、特徴を理解し、手に入る場所に商品が置かれ、入手できる適切な価格で提供されている必要がある。 これらの一連のプロセスが「売れる」という言葉に集約されている。

モノの製造としては、ニーズを知り、ニーズを満たす製品をつくり、提供することが一般的な流れであり、ニーズを知ることが起点となっている。起点である、ニーズ調査を行わない、とはどういったことなのか。

例を挙げる。

Twitterで流れた発言(真偽不明だが)

(時期的にカンブリア宮殿に出た時の発言か)

日本マクドナルド原田さん「アンケートをとると必ずヘルシーなラップサンドやサラダがほしいと要望があって商品化したけども売れたためしがない。ヘルシーなサラダでなくメガマックが売れる。お客は言うこととやることが違うからお客の話を聞いてはだめ。」

秋元氏の発言

勢いが止まらないAKB48――秋元氏「見たことない、説明不能、がカギ」 2010年11月05日

──今年もAKB48の勢いは止まらない。その勝因は?

秋元: データに基づいたマーケティングをしないからでしょうか。

この記事は2010年11月のものだが、この年の5月にNHKにて「仕事学のすすめ」という番組に出演している。

今月の「仕事学のすすめ」、語り手は秋元康さんです

第1回 あえてリサーチしない発想法

第2回 マーケッティングは役立たない

第3回 負けても目立つ自己プロデュース

第4回 仕事の壁は乗り越えるな

SONYウォークマン

市場調査はあてにするな - 「デジタル分析」から「アナログ直感」へ

ソニーがウォークマンを商品化する以前に、ウォークマンのようなものを商品化したところがあったでしょうか。ウォークマン以前にウォークマンはなかったのです。しかし、一度ウォークマンという商品が具体的に目の前に出現すると、「こういうのが欲しかった」という人が大勢現れました。

つまり、そうした商品のニーズは、多くの消費者のなかに潜在的には存在していたのですが、そのニーズは消費者の側からは具体的に顕在化することはなかったということです。なぜなら、消費者自身がそうしたニーズの存在に気がついていなかったからです。

ニーズの調査は不要か

例えば、SONYを代表するウォークマンは市場調査の結果、生まれたのか。Appleを代表するiPhoneは市場調査の結果、生まれたのか。これらに代表される製品は、顕在化されたニーズではなかったことは確かだ。

ならば、市場調査を行わずにモノを作ったほうが良いのか。自身が追求するものを作るほうが良いのか。

「マーケット・イン」と「プロダクト・アウト」

この市場調査が不要論が出てくる前に、ある言葉が流行った。「マーケット・イン」と「プロダクト・アウト」だ。これは、マーケティング不在の製品づくりに対して、投げかけられた言葉だ。この文章の前文で触れた、不思議な機能性を搭載した家電製品郡が、作っても売れない、という時代に直面した。この時になぜ売れないのか、作り手のひとりよがり立ったのではないのか、という意味で「マーケット・イン」>「プロダクト・アウト」という概念を示す人がいた。

プロダクト・アウトとは作り手が消費者に対して提案する形で製品づくりをする手法の意味として、マーケット・インとは、市場のニーズを汲み取り、それを元に製品づくりをする手法の意味として語られたと記憶している。

マーケット・インが台頭した例として、インターネット上で意見集約がしやすくなった点がある。すなわち、消費者側が欲しい機能を持った製品を提案し、その製品に対して消費者が発売されたら買う、との意思表明を行う。その製品を企業側が作れば良い、その流れはインターネットなら簡単に行えるだろう、というものだ。今、このような手法が残っているのかは知らないが。

しかし、この概念に対しての揺り返しが起こっている。

「顧客は自分が欲しい物を知らない。分からない。」

概ねそのような結論に達したように思う。例えば、SIの業界で「無茶を言う顧客」と「無理な仕事を取ってくる営業」、「融通が利かない開発者」の笑い話(切実な話?)がある。このうち、「無茶を言う顧客」は、自身がどのような製品・サービスを取得すれば、自身の仕事を大きく改善できるのか分かっているだろうか。分かっているのであれば、仕様・要求は変わることがないはずだ。

プロダクト・アウトによって、確かに今まで顧客の声を聞こうとしなかった反省はある。しかし、マーケット・インを行おうとしても、顧客は自分が欲しい物を真に分かってはいない。

だから、プロダクト・アウトでもない、マーケット・インでもない、第3の道が求められている。

(暇があったら今度、第3の道について書く)

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今年の夏の節電の結果

書き忘れていたので。

  • 5月実績 約270kWh
  • 6月実績 約130kWh
  • 7月実績 約130kWh
  • 8月実績 約170kWh

寝る時、エアコンつけっぱなし。エアコン使いまくってこの程度なら、どうでもいい数値。というか寝る時エアコン切っても、効果的かどうか疑問。

ミルエネは効果的だけれども、今回の施行ではミルエネ付ける前に節電終わってた。8月はとある事情でミルエネを使わなかったけれども、そこまで増えていないので、抑止の効果はあるけれども、必須ではない感じ。

あと体重は4月から測定開始して5kg減った。後1年で10kg減目指す。それでベスト体重になる。冬にリバウンドするので、気をつけたい。

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Windows向けMarkdownエディタまとめ

日本語でMarkdownを扱えるWindowsフリーソフトウェアについて調べてみた。

調べたリスト

結果

ほぼ MarkDown#Editor 一択である。

途中、DropBoxのAPIを用いてMarkDownした結果をDropBox上に保存できる有料Webサービスが存在したが、DropBoxの内容がサイト側から見られてしまう点(アプリケーションなら許せる)が問題と感じたため、利用しなかった。

今回の調べ事を行なっていく上で窓の杜さんの記事がより多く参考になったので感謝したい。

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記事のタイトルは複数存在して投稿可だと面白いかもしれない

wikiなどのコンテンツを誰でも編集できるシステムは、意欲ある人が集まれば、1つの内容が良くなっていく感覚がある。そういったこの力を超えた客観的な力を活用するとよりよい内容が作成され、人が誤解なく分かり合えるようになり、人の苦労が削減され、世のためになる。

ところで、コンテンツを閲覧しようとする流れの中で重要なのはタイトルだ。タイトルに釣られる。RSSリーダー、ソーシャルブックマーク、twitter…などのリンクでは基本的にタイトルが引用され、そのタイトルの魅力によって誘引力が決まる。twitterの場合などは感想と一緒に付されることが多いが。

釣りタイトルという存在そのものが、タイトルの効果を証明している。

この話の本旨だが、最近、このタイトルについて、複数の存在を認めてもよいのではないか、と思っている。複数の存在を認めるのはどういうことか。それは他者からの投稿を受け付けるということだ。

1つの良質な記事があるとして、その記事のタイトルが残念なことがある。例えば、記事の内容はしっかり書かれているが、タイトルにはその努力が反映されていないことがある。その場合、他者から見て、その記事の魅力となる箇所を強調したタイトルをその記事に投稿することで、より見つかりやすくなるのではないか。ということだ。よく、タイトルと内容が一致しない問題が存在するが、そのような問題も解決されていくだろう。

他者との連携(ソーシャル)において、記事内容、タグ付けという文化は進んだが、タイトル付けについてはまだ行われていない。

この複数のタイトル付けを認める方法として、いくつかある。ソーシャルブックマークサービスのように、勝手に外のサイトで記事の別タイトルを定義し、紹介すること。もう1つが記事そのものが投稿を受け付けることである。前者の方式の流れは、例えばNAVERまとめのようなサービスに収斂されていくのかもしれないが、問題は別のタイトルを付けるという様式に特化されていないことだ。後者は、記事の執筆者が投稿されたタイトルに対して承認という形でコントロールが可能であり、気に入らないタイトルを返上することが出来る。

記事タイトルに対して、複数のラインがあっても良い。扇情的なタイトルのラインがあってもいいし、控えめなタイトルのラインが合っても良い。その人が望ましいと思うタイトルの趣向を拾えると良い。複数のタイトルが存在した場合、人ごとにタイトルをランダムに見せ、反応が良いタイトルを探る、という形もあるだろう。タイトルは万人に1つのものではなく、対象によって変化しても良いはずだ。

後、ブログ内の静的ページはgithubで管理されてリビジョンが見えるような世の中だといい、という風な話も妄想しているが、いまいちブログに興味が戻ってこないので、割とどうでもいい。

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TCP擬人化の元ネタ見つかった

嬉しい。

TCPフロー制御アルゴリズムは人のマネージメントへ応用できるか Matzにて、同名のタイトルが元ネタであることがわかった。

TCPフロー制御アルゴリズムは人のマネージメントへ応用できるか ありえるえりあ

TCPは現実的なプロトコルなので、過度な期待はせず、以下のような冷酷な仮定と性質を持っています(カッコ内は技術的な用語)。
– 完全に終わったという報告しか信用しない(選択的あるいは否定的な確認応答を返せない)
– 余力があるかどうかを、部下にしょっちゅう自己申告させる(スライディング・ウィンドウ)
– 余力があると言った奴でも、実績の無い奴は信用しない。しかし、可能な限り速く、能力一杯までタスクアサインする(スロースタート)
– 部下の仕事の速さを測定して、状況再確認のタイミングに生かす(RTTの測定とタイムアウトの計算)
– 納期に遅れた(タスクを落とした)奴の信用度は一気に落とす。しかし、タスクを落とさない、ぎりぎりの能力を速やかに見つける(輻輳回避アルゴリズム)

これはまるで、人間を信頼することをやめて、「信用できるのは数字だけ」を信条とするマネージャのためにあるかのようです。

このクールさがたまらない。

他にも色々派生がある。
人生の全てはTCP/IPに学んだ
連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(10)TCP課長は几帳面でしっかりもの!

ドラッカーの名著で「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が可能なら、実用的なTCPで「もし高校野球の女子マネージャーがRFC 793の『Transmission Control Protocol』を読んだら」を書いてくれないものかな。誰か。高校野球の女子マネージャーとTCPだと無理筋だけど別のマネージャーなら…。

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